岩井志麻子『邪悪な花鳥風月』

邪悪な花鳥風月 (集英社文庫)

邪悪な花鳥風月 (集英社文庫)

新人女流作家・弘恵はウィークリーマンションに缶詰になり、向かいのアパートの住人をモデルに小説を書き始める。マンションに訪ねてくるのは編集者の「三浦くん」だけ…。
弘恵が書いた「虚空の鳥」「散らない花」「いずれ檸檬は月になり」「黒い風の虎落笛」の4篇と序章・終章からなっている。『ぼっけえ、きょうてえ』のような土着的な雰囲気はなく、全体的に都会的でスマートな作風だが、「いずれ檸檬」が一篇だけ異彩を放っている。幻想的かつ分裂病的で、なんとなく笙野頼子の『水晶内制度』を連想させる。とても面白い。