オースティン、中野好夫訳『自負と偏見』

自負と偏見 (新潮文庫)

自負と偏見 (新潮文庫)

イギリスの田舎町、5人姉妹のベネット家の隣家に金持ちの好青年ビングリーが引っ越してくる。ベネット夫人の思惑通り、温和で美しい長女ジェーンとビングリーは舞踏会で出会い、さっそく恋に落ちる。一方、次女エリザベスはビングリーの親友・大金持ちだが高慢なダーシーが気に入らない。しかしダーシーは、率直で才気あふれるエリザベスに次第に惹かれていく…。

「だから、ね、ほんとのことおっしゃって頂戴。わたしのその生意気なところが、お気に召したんですの?」
「いや、あなたの心の、そのピチピチしたところがでしょうね」
「なにもそれなら、生意気とおっしゃってもいいのよ。同じようなもんですもの。つまり、あなたは、いわゆるあのお行儀のよさだの、変な謙遜だの、うるさいお世話焼きなどに、うんざりなすったんじゃありませんの?すべてほめられたい一心だけで、物を言ったり、子をつくったり、考えたりする女にいや気がさしておしまいになったんじゃありません?つまり、そんな女たちと、わたしがちがうために、興味をお持ちになったんでしょう」
(p.580)

すごく面白かった!昔の少女漫画が好きな人におすすめ。活発だけど可愛げのない女の子と、クールで近寄りがたい雰囲気の男の子(本当は妹思い)という取り合わせは、まさに少女漫画。エリザベスは誤解からダーシーを嫌悪して冷たくあしらうんだけど、ダーシーはそんなエリザベスが気になって仕方がない。思いつめたすえの告白シーンは悶絶もの。しかもそれも即座にはねつけるエリザベス…。まあ結果として、二人はそれぞれの高慢と偏見に気づき、人間的に成長するんですけど。とくにダーシーの成長ぶりはすごくて、舞踏会で踊ることすら拒否していたダーシーが、エリザベスのために妹の不祥事の後始末をしてやったり、マゾヒスティックなまでに献身的に。もう言ってしまいます。ダーシー萌え!