ポール・オースター『最後の物たちの国で』☆★★★★
- 作者: ポール・オースター,Paul Auster,柴田元幸
- 出版社/メーカー: 白水社
- 発売日: 1999/07/01
- メディア: 新書
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カルト教団「走者団」「匍匐団」「微笑団」は19世紀ロシアの異端派に近い感じがする。行き倒れの死体の衣服をはいだり、金歯を抜いたりするのはユダヤ人迫害とか中国の阿片窟のイメージ。アンナやイザベルの職業、ショッピング・カートを引きずって、ゴミをあさる「街漁り」。これは途上国の都市でよく見られる光景。町並みの描写はニューヨークっぽい。おそらく、まったくの想像から作られた世界ではなく、現実で起こったことのコラージュなのだろう。
主人公が最終的に行き着く慈善施設ウォーバン・ハウスの物資の調達をしているボリス・ステパノヴィッチという叔父様がとても魅力的。うさんくさくて、ユーモアがあって、ちょっぴり贅沢で。アンナと二人、帽子をかぶってお茶をしたり、脱出できたらウォーバン・ハウスのメンバーでサーカス団を作ろうなんて夢を語ったり、何かとアンナの慰めになっている。
読後感は、ブローティガン『愛のゆくえ』ISBN:4151200215った。