水星の奥深い洞窟には、生物がいる。
(…)
彼らは弱いテレパシー能力を持っている。彼らが送信し受信できるメッセージは、水星の歌に近いほど単調だ。彼らはおそらく二つのメッセージしか持っていない。最初のメッセージは第二のそれに対する自動的応答で、第二のそれは最初のそれに対する自動的応答である。
最初のそれは、「ボクハココニイル、ココニイル、ココニイル」
第二のそれは、「キミガソコニイテヨカッタ、ヨカッタ、ヨカッタ」
(…)
地球人は、この生物の音楽好きなところと、美への奉仕のために熱心に整列を試みるところから、彼らに美しい名を与えた。
ハーモニウムと。
(カート・ヴォネガット・ジュニア浅倉久志訳『タイタンの妖女』ハヤカワ文庫)