宇月原清明『聚楽―太閤の錬金窟(グロッタ)』

聚楽―太閤の錬金窟(グロッタ) (新潮文庫)

聚楽―太閤の錬金窟(グロッタ) (新潮文庫)

前作『信長―あるいは戴冠せるアンドロギュヌス』以上に豪華絢爛だが、信長、秀吉、家康のほろりとさせられる友情話が挿入されており、ページ数が増えたわりに読みやすく仕上がっている。今回のテーマは、グノーシス主義錬金術ラ・ピュセル。前作もタイトルからしてアントナン・アルトーのパロディで、アルトー本人が狂言回しとして登場しているのに驚かされたが、今回も関白秀次をジル・ド・レと重ね合わせ、聚楽第錬金術の魔窟に変えてしまうという、あいかわらずの無茶ぶり(褒めてます)。荒唐無稽な設定でも、引き込まれてしまうのはストーリーテリングの力か。異端審問官の決めぜりふ、「○○に異端宣告(アナテマ)!」はちょっと真似したい。