古川日出男『アラビアの夜の種族』☆★★★★
- 作者: 古川日出男
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2001/12
- メディア: 単行本
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舞台は聖遷暦1213年、ナポレオン艦隊に攻め込まれんとするカイロ。エジプト側の高官に仕える美貌の高級奴隷アイユーブが用意した秘策は、読む者を狂気に導くといわれる『災厄の書』―夜の種族の語り部によって夜ごと語られる年代記。
もう面白くないはずがない設定。それに加え、翻訳文的な効果を狙ったのか、妙に癖のある地の文*1に、あざといほど現代風に砕けた会話文というミスマッチの妙。*2前半はイスラム社会の仕組みなど設定を詰め込むのでつらいかもしれないが、物語の中心が『災厄の書』の三人の主人公に移ってからはすいすい読める。RPGが好きな人*3、あるいは単純に読むという行為を愛する人に読んでほしい。読書好きの人間にとって、この本はまさに『災厄の書』だから。